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2003年8月 8日

8/1.2.3 ソーラーカー本戦記 予習編

というわけで、ソーラーカー大会の本戦である。
今回のレースは、新折り返し地点がポイント。トラブルが予想されるので、自分が言うのもおこがましいが、精鋭ボランティア部隊が重点配備されたのであった。
そんな折り返し地点から見た2003 WSR/JISCの様子をリポートしましょう。

まずは、レースの概要を簡単におさらいしよう。
場所は秋田県大潟村
ここにあるソーラースポーツラインという全長31km(!)の専用コースを舞台に3日間の周回数を競う形でレースは行われる。
今年から、北部排水機場の工事の関係でコースは25kmに短縮されたが、鈴鹿サーキットの1周5.8kmと比べても半端じゃない距離なのは変わらずだ。
折り返しや一般道との立体交差を除くとほぼ直線である。
ソーラーカーレースの最高峰であるオーストラリア大陸縦断レースWSCも3000kmのほぼ直線の砂漠の中の一本道で争われることから、WSCに強いチームは鈴鹿より大潟村に有利となる。

レースを争う車は、ソーラーカー。
電卓等でもお馴染みの太陽電池を搭載したマシンである。
ちなみにヘアドライヤーを一個動かすくらいの電力で70km/hくらいで走れちゃうのだ。
太陽電池とそこで発電したエネルギーを蓄えるバッテリー、またはキャパシタを併用して、モーターを回して走るマシンである。
バッテリーの電力があるので、雨や曇天でもそれなりに走ることは出来る。
晴天時であれば、トップチームであれば、140kmくらいでの巡航も可能だが、大潟のコースでは加減速のロスが大きいので、100km巡航できれば、ほぼ優勝確実である。


いろんなマシンが参戦しているわけです。

マシンは大きくわけて、2種類あって、フルサイズとハーフサイズ。
その中でも学生主体であるかどうか、太陽電池が市販品なのか特注品なのか、安価な鉛バッテリーなのか、高価なリチウムイオンや銀亜鉛やニッケル水素なのかで、クラス分けされている。
簡単に言うと(最近の分類はややこしいので識者からのツッコミお断り)、なんでもありのフリークラスと、市販品+鉛バッテリーのストッククラスに分かれている。
ちなみに、1999年のJona Sun は、ストッククラスでありながら、並み居るフリークラスの車を相手に善戦し、総合で2位に食い込む快挙を見せたのだった。

レースは3日間それぞれ、8時間、9時間、8時間に渡って行われる。
ドライバーは連続走行3時間を超えると新たな周回に入ることはできず、ピットインをしてドライバー交代をする。
各日のレース終了1時間前にチェッカーが振られて新たな周回に入れない。
例えば、16時終了だったら、15時チェッカーなので、14:59:59に通過すればもう一周回れるが、15:00:01だったりするとその日のレースは終わり。
15時をすぎた分はオーバータイムポイントになる。
例えば競っているチームがいたとして、バッテリー残量がからけつだった場合・・・。
・とにかく15時前に通過してもう一周する。なんとか1時間以内に戻ってこれるかも。
・無理はせずに1周少ないがオーバータイムポイントを少なめにして15:01頃にレースを終えて、早めに明日のための充電を始めよう。
という選択にわかれた場合、前者が15:45に戻ってこれれば・・・
・10周+オーバータイム45
・9周+オーバータイム1
となって前者が勝つが、前者が16:00までに戻ってこれなかった場合1周減算のペナルティを食らうので
・8周
・9周
となって後者が勝ったりする。
このへんが、ブレインスポーツと呼ばれるゆえん。

レース前後の朝晩にバッテリーに太陽電池からの充電が許されているが、夜間はバッテリー保管庫に各チームが持ってきて納めておくルール。
もちろん、コンセントから充電してはいけません。

まぁ、各クラスごとの争いはそれなりに面白いのだが、それらはざっくりとカット。
総合の争いについて書いていこう。
まず、今回の注目車をまとめてみよう。

■OSU model S'
1998年から2000年にかけて3連覇した強豪OSUの注目の新車である。
オーストラリア大陸縦断レースのWSCにも参加している。
注目は3輪から4輪へと大きくコンセプトを変えてきた点。サーキット走行では有利であるし、各タイヤへの負担が減るのがメリットだが、左後輪のみの駆動はオーストラリアの蒲鉾型の道路を意識したホンダの96年型マシンと同じ考え方のようだ。
また、OSUは勝ちに来たとピットで囁かれていたのは太陽電池。
裏面電極型のSunPower社の太陽電池を採用してきた。変換効率はモジュール単位で20%ほど。
市販のものでは14%といったところなので圧倒的に有利。
レギュレーション変更に伴いかつてよりマシンサイズが小さくなったが、OSUの旧車にくらべても発電量は1.5倍くらいになっているはずなのだ。
ホンダドリームや、ZDPスーパートンカチ(バイシクル)、スバルSuperEnergyなどに採用実績のある超高価な太陽電池である。
前週行われた鈴鹿では惜しくも2位に終わったが、秋田では新型車初勝利なるか!?が注目である。


OSU model S'
鈴鹿での雪辱に燃える。4輪はどうなんでしょう。

■芦屋大学 Sky Ace TIGA
いちはやく新レギュレーションに対応した新車を作り、熟成させてきたのがこのマシン。
実際ソーラーカーでは熟成が大事で細部の空力パーツの変更や、配線見直し、初期トラブルの克服等で、どんどん走るようになっていくことが多い。
Jona Sunでも96年型のデビューじは27周しかできなかったが、その後の改良により40周に到達したのだ。
TIGAは昨年の鈴鹿で優勝しているが、デビュー時はJona Sunに負けていたのをみるにだいぶ熟成が進んだようだ。
ところで、TIGAは今年の鈴鹿でも優勝となった。
その理由はオーストラリアのトップチーム、99年WSC優勝のAuroraから借りたガリウム砒素の太陽電池にあると見る。
その変換効率はSunPowerを凌ぐ21%超(モジュールで)。
この唐突な変更で、OSUが圧倒的につけたはずの発電量の差がほとんど無くなってしまったと思われる。
秋田初優勝なるか!?


Sky Ace TIGA こちらは去年の写真です。
フルサイズですが、コンパクトにまとまっていて軽そうです。

■玉川大学 White Dolphin
2001年、2002年と総合優勝しているマシンで連覇の期待も高い。
2001年のWSCでは、総合7位に入っている。
個人的にちょっとだけ納得いかないというかあれがいいのかなぁわかんねぇなぁという部分(後輪スパッツ)があるものの、概ね、「俺がふんだんな予算があったら、こういうの作りたいなー」という形をしているマシンなので応援したいのだ。
というのはソーラーカー業界では失敗作の呼び声も高い日産「SunFavor」(WSC以外ではそこそこ良かったのにね。空力もホンダのマシンより良かったのに・・・)、スイスビール工科大の「Spirits of Biel 3」といったマシンと似た空力的アプローチをしているからである。
玉川大学は最近ソーラーカーに力を入れていて、すっかりトップチームになってしまった。
実際に参加する大学生や高校生だけでなく、小学生や中学生への教育にうまくソーラーカーを活かしているあたりは、素晴らしいと思う。
ただ、現実的にみると、Gochermannという良い太陽電池を積んでいるものの、SunPowerやガリウム砒素の太陽電池と比べるとやや劣るかと(モジュールの効率で16〜17%くらいか?)。このあたりの不利を空力と熟成したマシンでどこまでカバーできるかが注目。


white Dolphin
足回りの曲線が美しいわけですよ。

この3台が優勝候補かと。
で、あと、この2台ももしかする。

■Team Junk Yard
ソーラーカーのメーリングリストから生まれたチームである。ZDPの主要メンバーが参加している。
ハーフサイズのマシンでWSCに参加して完走してしまった実力の持ち主。
ZDPとは93年WSCに参加してワークスチームに勝ってしまったり、エコノムーブやソーラーバイシクルでも優勝を重ねるトップチームである。
元々ハーフサイズのストッククラスに出ていたが、ここのところはフルサイズクラスにハーフのマシンのまま参加している。
マシンの熟成も進み、フリークラスに移行してから大容量のリチウムイオンバッテリーを得た。
車体が軽いので、もし曇天が続くようなら総合でも上位に食い込む可能性が高い。(ようするにあまり発電しない状況ならフルサイズのマシンはいらない錘を積んでいるようなものなので)
小さいマシンが大きなマシンをどこまで食えるか注目である。


ガメラ
やっぱ、小さいよねー。

■金沢工大 Golden Eagle
鈴鹿で圧倒的な強さを見せた後、満を持して3代目の「Golden Eagle」で99年WSCに参戦。総合5位、続く2001年にもWSCに参戦して総合10位となったマシン。
秋田ではまだ優勝経験はないが、常に上位に食い込む。
ちなみに、99年はJona Sunが勝てたが、2000年はオーバータイムの差で惜しくも敗北であった。
常に上位に食い込むマシンではあるものの、他車よりちょっとだけ古い、オーストラリア大陸縦断レース2回出ているのでちょっとガタが来ているかも、太陽電池は玉川と同じだが、前面投影面積こそ玉川より小さいものの空気抵抗値的には悪いと思われるので、他の車がトラブルを出さないとちょっと総合優勝は難しいかも・・・である。
ちなみに、このマシン加減速が素晴らしい。
折り返しの制限速度のところなど、ギューンとやってきてキュッと減速できる。
平均速度的にはかなり有利かも。(効率の悪い走りはしていないとの前提で)


Golden Eagle こちらも去年の写真でございます。
サイドの空力パーツが無くなってちょっと寂しい・・。

さてさて、この他にもいろいろなマシンがいて、東海大のようにメキメキと成績アップしているチームあり、エコノムーブのジュニアクラスでは敵なしの紀北工高の新型マシンも注目ですし、このあたりももしかするかもしれませんし、その他にも、手作りマシンあり、廃品利用あり、小さいの、大きいの、二人乗り・・・等々、またWSC96で総合3位に入った三菱マテリアルのチームも同好会として参加して来ている今年のWSRどうなりますか。。。


紀北の新車。OSUチョイ似、でも小さい480Wクラス


三菱マテリアル。往年のワークスマシンはこれだけになってしまいました。


だいぶこなれてきました、東海大のマシン。初年度は散々でした。

あっ、そうそう。
今大会にはFC車・・・燃料電池車も参戦しています。
5月のエコノムーブの時とは違い3日耐久ですから、ぜんぜんアプローチが違います。
こちらも注目です。


燃料電池車はこれ。あと、FNNの中継で紹介されてたマシンもあります。

続きはまたあとで。

 
Posted by waka at 2003年8月 8日 13:47
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コメント

スイマセン、いま思ったんですけど、ひょっとしてジアスプロダクツのロゴって、ソーラーカーをモチーフにしてるんですか?

ずーーっと、どういう意味のロゴなんだろうなぁ。コスモ星丸のパチモンなのかなぁ、なんて思っていたわけですが(笑)

似てますか!?
いや、元々はテレビなんですよ。自走式の(w

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