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2010年5月19日

ちょっと奇妙な出来事

まぁ、たいした話では無いんですが、一瞬、藤子不二雄A先生の短編集が頭によぎる出来事がありまして。
たいしたオチも事件も無かったんですがね。

5月18日の夜のこと。
八王子の八幡町の一つ手前の交差点。
荷物を取りに行きつつ、今日整理した不要な本をブックオフに持っていくべーと、事務所に向かって車を走らせていた時のオハナシ。
信号待ちで止まった助手席の窓をたたく人が。

みると、老婆。
ちょっと驚いたんだけど、道でも聞きたいんかな?と、助手席の窓を開けてみると
「すみません、すみませんね、老人で脚が悪くて、荷物も持っているもんで。すぐそこの角に娘がおるもんで、そこまで乗せて行ってくれませんか?」
はい?
言うが早いか、老婆はサッと後部ドアを開けて乗り込もうとしている
「よろしいですか?すみません、すみません」

走行中はドアロックしないけど、交差点に止まる時はドアロックは忘れるな...なんていう外国のハナシを思い出していた自分。
後にいた車はクラクションも鳴らさずに、サーッと追い越して行ったのは良かったのか、それともそれだけ奇妙に見えたのか。
そして、そのまま後部座席に収まる老婆。

えっと...?
「娘がね、すぐ、その先にいるんですよ」
はぁ、すぐその先って...
ちょっと車を走らせて八幡町の交差点の直前にキョロキョロする娘さんが。
老婆は窓をバンバン叩いてアピール。
いや、それじゃ娘さん気付かないでしょう?

窓を開けて差し上げる。
娘さん気付く。
老婆曰く
「ほら、あなたなにやってるの。」
「え?」
「乗りなさい」
はい?娘さんも促されるままに後部座席に乗り込もうとする。
ただ、うちの車は後部座席の右側にチャイルドシートが。
「あなたは助手席に乗るのよ」
うなずき、助手席に乗る娘さん。

えーと。
「すみません、すみませんね。ちょっと迎えに来てもらうはずだったんだけど、連絡が何時間も取れなくて」
はあ、走らせていいんですかね。

ひとまず、走らせる。
頭にいろいろよぎる。
人のいいのに付け込んで、ずかずかと入り込んで、しまいには、その人の全てを乗っ取ってしまう...
いつか読んだ藤子不二雄A先生の短編にありそうなハナシが頭に浮かぶ。
ああ、そういえば、魔少年ビーティーの最終エピソードのソバカスの少年もそんなハナシだっけ?

「ほんとにね、脚も悪くて荷物もあって...行けるとこまでで結構です、どこか大きなコンビニまででも」
コンビニですか...
ここから目的地の事務所までの間には、八幡八雲神社前のファミマくらいしか無いよ。
「田舎から出てきて良く分からないんですよ。すみませんね」
田舎から出てきたっても、いきなりヒッチハイクするかね。

最終的にはどこまで行きたいんですか?
「ええ、この娘の面接があって。知り合いの建設会社の社長さんの紹介でね。それで待ち合わせてたのにいつまでたっても来なくて。事故に遭ったんじゃないかとも思って心配で。でもどうしたらいいか困っていて...」
老婆は饒舌であったけれども、娘さんは時々相づちを打つ程度で物静か。
しかし、この時間に面接?

「もう7時間も待っていたんですけどね。約束の時間も過ぎて、待っててもしょうがないから歩こうって」
なるほど、そういうことですか。
「面接は明日なんですけど、どうしたらいいものかと悩んでしまって。すみませんすみません、ね」


老婆といっても良く見たらそれほどの歳ではないし、娘さんもみようによっては10代、まぁ、いいとこ20代半ばくらいに見える。
娘さんはなんというか、垢抜けない感じで、年齢不詳。
中国あたりの農村にでもいそうな雰囲気。
ちょっと加護亜依に似てるような気もする。

あ、で、どこまで行くんですか?てか、自分の目的地はすぐそこなんですけど。
「ああ、すみません、高幡不動まで行きたいんです。八王子でホテルをとろうと思ったんですが、高くて」
えっと、高幡不動だったら、電車ですぐですよ。
「ええ、お恥ずかしいハナシなのですが、そのお金も... 面接は明日の昼なのでそれまでの間に着ければいいので少しづつでも歩いて行こうかと」
事務所を通り過ぎる。

頭の中にはいろいろよぎる。
幸いにして娘さんと老婆は前後で分断されている。
一度に襲いかかってくることは無さそうだ。
いろいろ聞いてみたい好奇心と、少しの恐怖心。迷う。
一応片手ハンドルで左手は胸のところで握りしめ、不測の事態に備える。

本当に困っている人
困っているけど図々しく、あわよくば...と思っている人
困っていないのに困ったふりして、詐欺を働こうとしている人
困った人のふりをして乗り込んで来た、強盗犯...
いずれの可能性も考えられるんだよね、これ。

「本当は迎えが来るはずだったのに何時間も待っていたんですよ」
はあ。
「建設会社の社長さんなんだけど、その人の紹介で娘の面接をしてもらうことになって」
若干、重複する話を続ける老婆。
「どこか、本当に大きなコンビニまでで結構ですから」
うーん、どこまで行こうか。

「富山に仕事で行っていたらしくて、これから安房峠とか言ってて、もう待っててもしょうがないと、歩きはじめて」
はあ、連絡は取れたんですね。安房峠経由で帰ってくると距離は近いですからなぁ。
「そうなんです。なんかついこのあいだもあのあたりは雪が降ったらしくて」
うん、話としては辻褄があってる。
では富山からいらしたんですか?
「いえ、私たちは山梨から来たんです」
はあ。山梨ですか。

「山梨も規定給が600円とバスとかにも書いてあったんですが、実際にはそこまでもらえなくて」
確かに田舎のバスの広告にはお役所の「最低賃金を守ろう」系のやつが多い気がする。
このあたりの話は本当っぽいな。
「娘もマジメな仕事しようと思ってもなかなか無くて、だったら東京に出てこようかと、建設会社の社長さんを頼って」
なるほど...
「山梨はアパートの家賃も高いんですよ、7万円くらいしてしまうけど、東京も横田基地のあるあたりなら5万円くらいでも借りられるということで」
確かに案外、田舎って持ち家が中心だから、いざアパートっつうと高かったりするから、このへんの話も本当っぽいな。

「もう娘と二人、6畳一間でも構わないから働こうと思って。明日は立川ともう一ヶ所で面接受けるんですよ」
なるほど...ね。いや、頑張って下さい。
「娘はマクドナルドでコーヒー1杯で朝まで...と言ってるんですが、私は年よりなのでそれもまた...」
うーん。
高幡不動までいってアテはあるんですかね?
「ええ、高幡不動まで行けば、その先は大丈夫なんです」

やはり話を聞いていて面白いって言ったらおかしいけど、気になったし、もしこの人たちが本当に困っている人だとしたら、どこか適当なコンビニにほっていくのも忍びない。
一方で、また別の車にこうやってトツゲキするのかと思ったら、どんな人がいるか分からないし、逆にこの人たちが厄介起こすかもしれないし...
話を聞きながらグルグル巡る考え。
気付くとほとんど高幡不動に近くなってきた。
こうなったら、高幡不動まで行くしかないか。

山梨のどのへんなんですか?
「甲府です」
お、珍しく娘さんが応えた
「甲府といっても身延線の方で」
老婆が付け加える。
はあはあ、南甲府とかの方ですね。
「ええ、そうなんです」
甲府もいいところですよね。(ここも辻褄があってるな)
「でも、ほんと、田舎で仕事も無くて」
日本はそこまで地方が疲弊しているのか...
「とりあえず、建設会社の社長さんのところで面接させてもらう他に、もう二社受けるんです」
建設会社の社長さんも確実に雇うって言えばいいだろうけど、そうもいかんのかな。
まぁ、条件とかいろいろあるしなぁ。

「私も清掃の仕事もやってたんですが、なにせ脚が悪くて。あら、そこのコンビニでもいいですよ」
いや、もうほとんど高幡不動ですから。
それに、足が悪いアピールと荷物があるよアピールしている人を置いて行くのはちょっと心苦しいよ。

そして、高幡不動。
止められそうな場所で車を止める。
娘さん、あっという間に降りる。
礼もナシかい。

そして老婆
「本当にありがとうございました。本当にすみません。目的地が近くだっておっしゃってたのに。」
いやいや、いいですよ。
「明日の昼までに立川に着ければいいので、あとはなんとかします」
ん?目的地は立川だったんかい。
「あの、せめてお名前を...」
いやいや、いいです。
「今はムリですけど、山梨に戻ったら、お礼くらい贈りますから」
いや、ほんと、いいです。
てか、ピーティーや藤子不二雄A先生パターンだと家に上がり込まれるパターンのやつだし、それ。

「ほんとうにありがとうございました。ガスターっていうですかね」
と言いつつ時計を外す老婆
「私、胃が悪くて、これで胃薬を買うお金を貸してはもらえませんか」
えーそりゃ、カンベン。ホントに、それは、ムリ
ほら、そこに警察があるから、そこに行って聞いてみるといいんじゃないかな?
「そうですか、わかりました。本当にありがとうございました。娘はどこいったのかしら」
先に降りた娘さんの姿はすでにナシ。
うーん、大丈夫かいな。
「それでは」

ふー、やれやれ。
不思議な体験だった。
もしかして...と椅子を見たけど、特に汚れてるじゃなし、まずは一安心。
車の中も特段異常なしだ。
あ、ナンバーは見られてるのか。
一応、会社の車で良かった。
とりあえず、次からは交差点で止まる時はドアロックだな、こりゃ。


というわけで、対したオチも無い話でしたが、読んでいただいた方はありがとうございました。
このあと、会社に老婆と娘さんがやってきたら、本当に藤子不二雄A先生の世界です。

 
Posted by waka at 2010年5月19日 08:32
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コメント

「ちょっと奇妙」ってこれ、
相当奇妙でしょ。

 わたしゃ臆病なので、
こんな体験したら夜おしっこにいけなくなるよ(笑。

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